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今年でプロ28年目を迎える工藤選手です。(今回は編集部よるインタビューです)
工藤選手は「考える力こそ最強の武器」とおっしゃっています。

普段からどんな事を考えながら野球をしているのか?独占インタビューしてきました。

体の使い方を知る02

- 工藤さんが体の本質を理解しようと思ったきっかけはなんですか?

工藤選手: きっかけは筑波大学で筋力測定をして、体について少しずついろいろと勉強し始めた時ですね。また結婚して妻が栄養関連に従事していたこともあって、僕はトレーニングや人体について知りたいと思うようになっていきました。そして、NHKの人体特集をみたりとか人類の誕生特集をみたり、そういうディスカバリーチャンネルを見たりして勉強しましたね。

僕の場合、言葉で書いてあるだけだと理解しづらいのですが、映像とそれに対する言葉や解説があると理解しやすいんですよ。普段から打者の映像を見ながらスコアラーの情報を聞いており、その方が頭に入りやすいので、そうやって勉強しました。また統計をとって、小さいデータを沢山集める事で仮説をたてていくことが好きですね。トレーニングの本もたくさん読みましたけどね。

ただ、何が大事か、どこが大事かは言えますが、どのトレーニングが良いかは決められません。股関節、体幹、インナーだとか、どこを鍛えればいいかは言えます。だけど、どう鍛えるかはその本人によりけりです。

- その本人に適したものをやらなければいけないのですね。

工藤選手: いや、適したものが何かを見つける為にトレーニングをするのです。これはいまいちだとか、これは一つだと使えないけど、あれを組み合わせれば使えるとかですね。試行錯誤しながらみつけていく感覚です。

他のスポーツから考える

- 工藤さんは他のスポーツも見て、こういう動きは野球にも生きるのだと考えたりするのですか?

工藤選手: すべてのスポーツに言えますが、見た目がスムーズでないものはどこかに力が入っていると思います。以外と傷害を起こしますよ。ただ、スムーズに動いていても、ぶつかるようなスポーツはすべてケガに繋がりやすいです。だからコンタクトスポーツは本来選手寿命が長くない。寿命が長いスポーツは、コンタクトが少ないスポーツです。だからコンタクトが少ないスポーツに限って言えば、滑らかにスムーズに動いている選手は傷害が少ないものです。

- 逆にぎこちないフォームで動いているのをみると、工藤さんにとっては上達のヒントになりえるということですか?

工藤選手: ありえますよ。どこがどう動いてぎこちないのかとか考えます。

工藤選手の考える指導論

工藤選手: でも、それを本人にいって直させてはいけないんです。それはその人がいままでの環境の中でそうしてきたのであって、その環境を覆すようなことを言ってはいけません。悩みます。だから、どういう選択肢を持って人を見るかということが大事です。

- 選択肢といいますと?

工藤選手: この選手はどういう環境で、どういう生活を送ってきて、どういう人に野球を教えてもらって、どういう変化球をどの時期に覚えて、といったことを本人と話した中で、その中で一番本人が伸びていた時期の練習が一番その人にあった練習です。それを見つけます。

- その人の表面を見るのではなく、その奥、時間軸でいうと過去までみているということですね。

工藤選手: その中でアドバイスを考えるんです。すべてパッと見ただけでアドバイスをしているわけではありません。今の子どもたちは周りにたくさんの情報がある分、なぜそういう風に思って、なぜそういう風に言っているのかを言わないと、納得しません。

何故、ランニングは必要なのか?

工藤選手: 例えば、なぜランニングが必要なのか?なぜ量を走らなくてはならないのか?

- ではなぜランニングが必要なのでしょう??

工藤選手: すべての基本はランニングから、と言われています。スポーツというものは走ることに始まって走ることに終わる。バランス、体の使い方です。

 例えばジョギングをするとします。何故するのか?
心肺機能を高める事もあるし、回復能力を高める事もある。体をあっためて最後のストレッチにもっていく為のジョギングの役割もあります。それらの(ランニング)効果を知り、使い分けなければいけない。

他に、なぜPBのようなトレーニングが必要かというと、野球を長いシーズンやろうとすれば絶対に筋持久力が必要になってくるからです。筋持久力が無くなり、それが最終的に疲労につながると、集中力の低下へとつながっていきます。そこでバットスイングを速くしなければならない、ピッチングとして速くなくてはいけないとなると筋肉がついていかない。そうすると当然怪我にもつながる可能性が高くなっていきます。で、早い動きが必要だから瞬発系も必要になってくる。

 ピッチャーは一日何球投げると思いますか?120球で完投したとして。

- 250球くらいですか?

工藤選手: 違います。300球は超えるんですよ。試合の合間、キャッチボール、ブルペンでの投球すべてを含めれば。瞬発力だけで200球はもたないのです。だから筋持久力が必要です。だからいろいろな状況のなかで、それらに応じて僕らは対応していかなくてはなりません。手間暇かかり時間もかかります。ただ一試合良ければいいものではありません。144試合乗り切る力をオフシーズンに鍛えているんです。

プロとして長くやる為には

工藤選手: 僕だけがそうではないけど、他のプロ野球選手も瞬発力と持久力を念頭にいれて(トレーニングを)していますし、考えてしないと長くはできません。プロ野球で1,2年成功するだけなら、いいチャンスでポンと打てばいいのだけど、長くは続かない。なぜ続かないかというと、長い間同じピッチャーと戦うからです。

- というと相手のことはもう十分知っているわけですね。

工藤選手: 最初抑えていたピッチングも、じきに当たるようになります。次にはヒットになります。そして高く上がればホームランを打たれてしまいますよ。だから毎年毎年新しいものを身につけていかないと。成績を残した上で長く続けるのは難しいんじゃないかと思いますよ。

- この世界で10年20年やっている選手というのは、考えるのが好きな選手ですか?

工藤選手: 考えるのが好きじゃない選手もいますけど…。

- 工藤さんは考えるのが好きですよね。

工 僕が考えるのが好きなのは、もっといい方法を探しているからです。もっと楽に力を入れずに投げることができないか、もっとタイミングのとりづらい球を投げる方法がないか、もっとコントロールをよくする方法があるんじゃないか、とかを考えています。
これから球を150km、155kmにしようなんて思っていません。それよりももっとバッターにとっていやらしいピッチャーになるためにはどうしたらよいかを考えています。

- そのアイディアが思い浮かぶ瞬間はどのような時ですか?

工藤選手: 寝ている時間か,目をつぶっている時間のどっちかです。話している時はあまりいいアイディアは浮かばないんですよ。野球の事しか考えていないので、その中で、「あ、明日こういうのをやってみよ。」とか「あいつ今日あんな練習してたな。なんであの練習をしていたんだろ?あぁこういうこと考えて試してたのかな。ちょっとやってみよ。」なんだろなんだろとイメージを膨らませていると閃くんです。

 そして、まず考えついたら行動してみる。試してみる。行動してみて初めてこれは違うとかがわかる。1日やってわからなければ2日やってみればいい。使えると思ったら続けてみる。1週間、2週間やってみてダメだったものはダメなんですよ。そこをいつ切り替えるのかは、僕はその選手の調整能力じゃないかと。

試合中の流れを切る為には

- 試合中の悪い流れを断ち切るために工藤さんがマウンドで心掛けていることは何ですか?

工藤選手: 今、自分がどういう状態で投げているか、相手が今どういう精神状態で向かっているかを知る事ですね。

- つまり客観視するという事ですね。

工藤選手: もう一人の自分を作って遠くから自分を観る事ですね。ただ、高校生にとっての流れを断ち切る事とプロ野球選手とでは、申し訳ないけど、レベルが違う。高校生はどちらかというと精神的なものだけど、僕らは情報です。バッターの情報、チームの情報、常に情報を解析してバッターに投げています。プロは、全部違う攻め方があるんですよ。それを全部覚えなくてはならない、だから情報戦です。

- なるほど。では工藤さんが高校球児にアドバイスするとしたらどのようなことですか?

工藤選手: 「練習した苦しみを思い出せ。」と言いますね。僕はベイスターズの選手に対して、自主トレ・キャンプ・オープン戦、一番苦しい思いをしたチームが優勝する、と言っています。
高校生にも同じです。「お前らは誰にも負けないくらい練習したか」「誰にも負けないぐらい頭を使い野球を勉強し、野球を考えながら生活してきたか」、それを全員ができたなら、日本一のチームになれると思います。

- それが精神的なよりどころになるんですね。

工藤選手: そうですね。練習は嘘つきませんから。練習しない奴はどんなに頑張ったって無理だって。僕は日本一じゃないにしろ、間違いなくそれに近い練習は高校の時にしました。

自分を高めよう

- 今の高校生は他の高校がどんな練習をしているかを気にしているんですよ。

工藤選手: それは周りのチームを見て、自分のチームを見返すこともできるのかもしれないけど、周りが普通のことをやっていて自分たちが特別なことをやっていると思うのは違いますね。時には周りを気にせずにやることも必要です。

当然情報が多いゆえに、そういう気持ちに陥ることはありますが、僕達の頃は情報がなかったから自分たちでやるしかなかった。「自分たちの野球やろうぜ。それで負けたら仕方ない。」って割り切っていましたね。情報がありすぎて不安だったら、周りを気にするのではなく、自分の練習をしなさい。

僕が大事だと思うのは、何があっても「自分」だと思います。「自分」をなくして他人をみて人がやっているから自分もやろうっていうのは、他人に依存しているだけでしょ。他人に依存して自分は作れないでしょ。確かに個を作るのに周りに助けてもらう部分は必要となるかもしれないけれど、個を強くする、磨こうとするのに周りしか見ていなかったら個は強くならないと思いますね。

- 高校野球に関しても、個に対する意識が必要かもしれませんね。

工藤選手: ボールを遠くに飛ばすこと、遠くに投げること、早く走ること、この3つができればとりあえずはいい選手でしょ?それをなんで周りを見ようとするのか、気になるのかがわからない。

- まずは自分ということですね。

工藤選手: と思うけどね。自分のことを知らないで、相手のことを知ろうとするなんてできないよ!(笑)絶対におかしいよね。自分を理解して自分の信じるやり方を一心不乱にやる。周りじゃなくて、自分を高めてほしいですね。


高校生へメッセージ

- 高校生へのメッセージを。

工藤選手: もっと良い方法はないかと考えた時に楽な方に行っちゃ駄目。地味な方にいかなきゃ。苦しいけど地味な方へ、地味な方へいかなきゃ駄目ですね。

「走る本数が少なくて筋肉付く方法ありませんか?」
「ねぇよ。」
「長いジョギングをせずに回復能力を高める方法はありますか?」
「ない。」

高校生の時は腹筋を何千回もやったり、走る事の意味がわかんなくても走りました。そうやって自分自身が苦しみを乗り越えていかない限り、体の強さも精神的な強さも備わって来ないと思います。その後の野球人生を考えたら今頑張っておくべきです。今を頑張る事で繋がっていきます。未来がみえなくてもいい。君達にはまだ未来がみえないと思います。僕だって(当時は)みえませんでした。未来がみえなくても、今を必死に頑張って下さい。


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工藤 公康選手
生年月日:1963年05月05日
出身地:愛知県
名古屋電気高
第63回全国高等学校野球選手権大会出場。2回戦の長崎西高校戦でノーヒットノーランを記録。ベスト4進出

西武ライオンズ
(1981年ドラフト6位~1994年)
福岡ダイエーホークス
(1995年~1999年)
読売 (2000年~2006年)
横浜 (2007年~ )
獲得したタイトル
MVP 2 回 ( 1993年 、 1999年 )
正力松太郎賞 1 回 ( 1987年 )
最優秀防御率 4 回
( 1985 年、 1987年 、 1993年 、 1999年 )
最高勝率賞 3 回
( 1987年 、 1991年 、 1993年 )
最多奪三振 2 回
( 1996年 、 1999年 )
最優秀投手 1 回 ( 2000 年)
ベストナイン 3 回
( 1987年 、 1993年 、 2000年 )
ゴールデングラブ賞 3 回
( 1994年 、 1995年 、 1999年 )

 

【第1回】 藤掛 三男氏

【第2回】 不破 央氏

【第3回】 団長氏

【第4回】 金井 豊氏

【第5回】 大渕 隆氏

【第6回】 高橋 がなり氏

【第7回】 asamiさん

【第8回】 島田 佳代子さん

【第9回】 藤田 晋氏

【第10回】 工藤公康氏 独占インタビュー

【第11回】 大塚 豊氏