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大塚豊氏×高畑好秀

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「楽しい」を忘れていないか?

高畑: 野球で究極の負けない方法って知ってる? 草野球チームでもジャイアンツに勝てるような。

大塚: いえ、わからないです。

高畑: バッターボックスで、地面にべったり座り込んじゃう。どう? 投げられる?

大塚: 投げられないですね。

高畑: フォアボールの連続だよ。ひたすらボールを待つだけ。点は入るよ。野球のルールブックにもそれをしてはいけないとは書いてない。勝ちたいなら、そうすればいい。でもそれをして、野球は楽しい? 4球投げるのをただ待って、1塁へ歩くだけ。勝てるけど、面白くないよね。

大塚: はい。野球をやりたいと思わなくなりますよね。

高畑: じゃあ、「勝つ」ってなんだろう? みんな「勝ちたい」っていうけど、本来その競技が持つ楽しさが感じられないなら、それは違うよね。だったら、そこまで勝たなくてもいいんじゃないのかな? 自分がマウンドで最大限楽しめばいい。目いっぱい楽しんで投げて、打たれるから、面白いんだよ。打たれたくないでしょ?

大塚: 打たれたくないですね。

高畑: 仮に大塚君が真っ向勝負したとするよね。誰一人打てない、みんな三振したらどう?

大塚: 気持ちいいかもしれませんけど、物足りないでしょうね。

高畑: 飽きるよね。やめちゃうかもしれない。ゲームで言うなら、いとも簡単にクリアできるファーストステージを、何回もクリアするようなもの。そんなの面白くないよね。

大塚: やはり勝って当たり前の試合より、自分の力を最大限に出さないと勝てないような、勝ったり負けたりする全国大会のような試合の方が、楽しいですね。

高畑: そうだよね、楽しいから野球をやってるんだよね。その気持ちを忘れないで欲しいな。プロには、打たれに行くんだよ。打たれることを楽しめなくなったら、終わりだね。

大塚: 打たれるのが怖くて、フォアボールを連発するピッチャーもいますが、そういうピッチャーは楽しめていないですね。

高畑: 打たれることは、楽しいんだよ。だって打たれなかったら楽しくないんだろ? 自分も目いっぱい投げるから、打つ方も目いっぱい打ってくれよ、と。だから勝負って面白い。相手が怪我して打席に入ったら、面白くないよね。だからベストの状態で来てよ、と。思い切り打てよ、と。そこで「どうなんだろう」とやるから面白い。今はひたすら勝つことしか言われないから、負ける楽しさを知らない選手が多いんじゃないかな。

大塚: 負けるのは悔しいですけど、次へのステップというか、負けがあるから成長できるというのは体験してきたので、負けたから全部がダメとは思わないですね。

高畑: プロへ行っても、「レベルの高い人たちに打たれに行くんだ」と思ったほうがいいよ。絶対抑えようと思ったら、力みばっかり出てきちゃって、つまらなくなる。そこで大抵の選手は「練習が足りない」とか言って、体を使うことばかり考える。今まで以上に練習しないと、と練習に依存する。練習も大事なんだけど、そういうときに頭に依存する、頭脳派。そこに活路を見出して欲しい。
間違った練習を反復すれば、やればやるほど下手になるからね。例えば、アッパースイングを正しいと思って懸命に振り続ける。振れば振るほど下手になる。いかに正しいことを継続するか。正しいっていうのは、絶対的な正解はないんだけど、自分の中での正解は持つべき。それを持つには、体のことも勉強し、動きのことも勉強し、考えているか? そういうことの積み重ねが自分の正解を作る。考えないで他人のいうことを鵜呑みにすると、間違ってしまうことが多々ある。それを繰り返してしまうと、おかしくなってしまうんだよ。

「人間力」を高める

高畑: 野球をうまくなろうと思わなくていいと思う。人間的に、いろんな面ですごいなと思われる人間になっていったほうがいい。
今、野球だったら野球を上手くなろう、上手くなろうとするでしょ? でも、人間的に大きく成長したら、大きく成長した自分が野球もやるし、恋愛もするし、人間関係を築いていける。つまり「人間力」が大きくつけば、野球もできるはずなんだよ。みんな、その仕事ならその仕事をうまくできるようになりたい、とスキルとか技術に逃げてしまう。そうではなくて、もっともっと大きな自分になることを目標にしたら、自ずと結果はついてくる。

大塚: 自分も高校のときは「甲子園」という目標があったので、野球しかやってなかった。夜10時半にグランドの照明が消されるんですが、そのあとも室内でバット振ったり。授業中も寝ていて、野球だけという感じでした。
でも大学に入って、それだけじゃダメだと厳しく言われました。選手同士でも授業はしっかり受けるように言い合うし、私生活でも門限が決められていて、携帯電話の使用も夜10:30までと決まっています。大学では、私生活だったり、授業態度だったり、人間的にも成長していくっていうのがある。それを4年間しっかりやってきて、大学で伸びたと思います。人間性が大事と言うのは、実感がありますね。

高畑: 人間性がいいというのは、逆に、例えば野球やっているときに先輩を意識しすぎなりしない?

大塚: 野球のときは、気にしません。先輩とかにも自分の意見を言ってきました。けっこうふてぶてしいと言われますよ。

高畑: いいね。さすが、MQテストでいい点をたたき出しただけあるね(笑)

いつまでも野球小僧で

- プロでの抱負は?

大塚: これからプロの世界で1年でも長く投げられるようなピッチャーになりたい。その中で1年1年しっかり与えられた仕事を自分の力を出したいと思っています。

高畑: 僕はね、色紙に「努力」とか書く人は、あまり好きじゃない。いつから「努力」になったんだ、と。野球が好きだったんでしょ? プロの選手もみんな野球小僧だったわけだよ。無我夢中でやってたはずだよね、楽しいから。
でも「野球が嫌になった」とか「つまらなくなった」とか言う人がいる。嫌いなことをやるのが「努力」で、好きなことをやるのは「無我夢中」なんだよ。例えば、好きな女の子のことは四六時中考えるよね、好きだから。「考えろ」って言われなくても考える。でも、大抵の選手は、野球について「考えなきゃいけない」になっている。好きなら自然に野球のことばかり考えるはずなのに、変わってきている。好きな子と一緒にいたら楽しくて、何時間でも一緒にいたいよね。野球だって好きだったら何時間だってやっていたいはず。

- いつしかそれを忘れてしまっている、と。

高畑: 好きでやっていた野球が、「人からやらされる野球」、「勝つためだけの義務の野球」、「人と比較される野球」、「ひたすら競争する野球」になっていて、本来何のためにやっていたのかっていうことをついつい見失っている。プロへ入ると、「仕事でお金を稼ぐための野球」になってきたりする。
プロ野球を見ても、サラリーマンが仕事をしているような野球に見えて、つまらないときがある。ノルマを課せられて業績を上げないと、とか給料に跳ね返ることを期待して、とか。「スポーツサラリーマン」に思えるときがある。
プロ野球の選手に「長くやれるからプロゴルファーになればよかった」とか言われて悲しくなったことがあるんだけどね、野球が好きなんだろ、いつからお金を稼ぐことの方が主になっちゃったんだろう? 目的がすりかわっているというのかな。雨降ったら「試合中止か、ラッキー」みたいなことをいう選手もいるしね。

- 子供の頃は、「えーっ、雨なの? 試合やりたいよ」って思っていましたよね。

高畑: 雨だと悲しいくらいがっかりしたよね。なんであれが変わっちゃったのかな? そうなると下降の一途をたどっていく。努力をしないといけない、なんて思い始めた時点で、退化していく。
子供に野球を教えると、目をキラキラさせているよ。楽しくやっている。あれが本来の姿でしょ。プロ野球で、「1塁まで一生懸命走ろう」とか言っているけど、子供の野球を見てよ、ボテボテの当たりでもセーフになりたいから、足が速いとか遅いとか関係なく、タラタラ走っている子なんかいないよね。それが必死ってこと。「タラタラ走ると罰則があるから全力で走ります」じゃなくて、さ。ゲームだから1塁で生き残りたい。だから子供たちは懸命に走る。

- 「そうしよう」と努力しなくても、自然とそうなっている、ということですね。

高畑: 無我夢中になっている姿を、人が見て「努力しているね」と思う分にはいい。自分が、それを「努力している」と思い始めたら、上達しない。
プロなんだから、結果的には仕事になっている。でも、大人が真剣に遊び倒せば、それが仕事になるんだよ。それを忘れないで欲しい。野球をとことん遊び倒す。中途半端じゃダメ。子供の頃みたいに、無我夢中でボールを握っていたい、とひたすら遊び倒せば、自ずとそれが仕事になってくる。その気持ちさえあれば、どんどん上手くなるし、いくらでも考えたいと思うだろうし。
なんで大人になったら、それを失っちゃうんだろうね。悲しいよね。大塚君には、いつまでも「あいつ、野球小僧だな」と言われるような選手になって欲しいな。

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大塚豊氏

大塚 豊 (おおつか ゆたか)
東京都出身。1987年12月20日生まれ。この秋のドラフト会議で北海道日本ハムファイターズから2位指名を受けた、フォークボールが武器の技巧派右腕投手。ストレートの球速はMax144キロ。大学4年間で23連勝を含む41勝を挙げ、東京新大学リーグの最多勝利記録と連勝記録を更新した。2009年春の大学選手権では3連続完投勝利を含む4連投でチームをベスト4に導いた。某雑誌の企画で高畑の開発したMQテストを受け、高得点をマークした、強いメンタリティの持ち主。

 

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